新民事訴訟法とPL訴訟


新民事訴訟法の成立でPL訴訟が増える!?

民事訴訟法は、権利義務をめぐる紛争利害の衝突を、法律的に解決調整するための手続きについて定めた法律です。なかなかなじみの薄い法律ですが、PL事故や環境汚染問題などの訴訟はこの法律に則して行われています。その民事訴訟法が約70年ぶり改正され、98年1月1日から新民事訴訟法として施行されています。そしてこの新法の施行によって民事裁判が次のように変わると考えられています。

・決着までに時間がかかりすぎる
・費用がかかりすぎる
・訴訟を起こした側の原告がなかなか勝てない

これが
・決着までの時間が短くなる
・期間が短くなるので無駄なコストがかからない
・文書提出義務が厳しくなり、被告側不利に

つまり原告側にとって訴訟を起こしやすい制度になったというわけです。

このような流れの中で、影響を受けるといわれているのはPL訴訟です。1995年製造物責任法施行後、PL事故は報告件数は急増したものの、裁判沙汰になることはあまりありませんでした。が、新民事訴訟法施行によって、今後こうしたPL事故が裁判所に持ち込まれるケースが増加していくと予想されています。会社としてPL防止対策を行うことはもちろん重要ですが、万一訴訟が起きてしまった時に備えて、訴訟費用を担保し、訴訟にあたっては保険会社からのアドバイスが得られるPL保険の付保が必要です。

新民事訴訟法の改正のポイント

  • 情報開示制度の拡充

    旧法の下では、証拠として提出する義務のある文書は限定され、範囲の狭いものでした。しかし新法では、提出文書の範囲を大幅に拡大し、訴訟に協力する国民の一般義務>を負うものとなりました。(ただし、下記@〜Bの文書は除く。)また、提出命令に応じない場合には、証明する事実に関する相手方の主張を真実とみなす判決を裁判所が下す(敗訴!?)ことも可能となっています。こうなると訴訟を起こされた被告側は、自らにとって不利な文書を提出しなければならない場合も出てくるでしょう。

    提出義務対象外の文書 @自己使用文書(日記、個人用メモ等)
    A技術職業の秘密に関する文書
    B刑事訴訟を受ける恐れのある事項を含む文書
    ※これ以外のものには原則、
    提出義務が課せられます

  • 争点整理手続きの整備

    民事裁判においては、事件の争点を明確にし、証拠の整理手続きを行うことが重要です。旧法の民事裁判においては、何が争点なのか明確にならぬまま証人尋問等に入り、ムダに長い時間を取られるということが多々ありました。そこで新法では、口頭弁論の前に争点等を早期に明らかにする争点整理手続きを行い、その後口頭弁論において焦点を絞った証拠調べをしていくというシステムを整備しました。これにより審理のスピードアップ化が図られ、何度も裁判所に足を運ぶことも少なくなると期待されています。

  • 小額訴訟手続の創設

    新法では、原告の選択と被告の同意により、簡易裁判所で行われる30万円以下の金銭請求訴訟については、従来よりも簡易な手続で迅速に紛争を解決する手段を取ることが出来るようになりました。(新民事訴訟法第2編第7章)。これは司法を一般市民に利用しやすいものにするという理念に基づいており、この方法を使うと、裁判所に出頭するのは1日で済む様になります。このことで、従来は泣き寝入りしていた事件が裁判所に持ち込まれるということが増加すると予想されます。